Vol.6インターンシップの計画・告知・コンテンツ作成
三省合意によるルール変更はインターンシップをどう変えたのか。事例紹介とともに実施のポイントをお伝えします。
公開日:2024.05.09
旧来、インターンシップと総称されていた職業体験について、2025年卒から大きくルール変更が行われました。
これまで一括りにインターンシップとして開催されていた取り組みは、キャリア形成プログラムとして4タイプに分類されることになりました。ここでは、変更後のタイプ解説と、事例紹介などをもとに実施のポイントを紹介します。
Summary
❶キャリア形成プログラムの4タイプについて
インターンシップは、実際の仕事に触れる就業体験を通じ、学生が将来のキャリアを考える機会として提供されてきました。近年ではプレ期間における自社PRの一環として開催する企業が増え、実質的な採用活動の早期化ともいえる状況でした。
そうした中、学生の自律的なキャリア形成を支援するため、インターンシップに関するルール変更が行われることとなりました。具体的には「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が、これまでインターンシップと総称されてきたキャリア形成プログラムを4つのタイプに類型化し、それぞれの定義を明確に設定しました。「インターンシップ」の名称を使うためにクリアすべき必須条件が設定され、開催のハードルが上がった一方で、一定の条件を満たせばインターンシップで得た学生情報を採用に活用できるようにもなったのです。
産学で変えるこれからのインターンシップ―学生のキャリア形成支援活動の推進―
■学生のキャリア支援活動(4類型)
今回の改正で、キャリア形成に関するプログラムは4つのタイプに類型化されました。
【タイプ①】オープン・カンパニー
企業や業界、就職情報会社などが実施する説明会やイベントです。就業体験がなく、企業の説明や体験ワークを1日などの短期間で実施するものです。近年開催が増えていた1Dayインターンシップと呼ばれるものは、ほとんどがオープン・カンパニータイプとなります。
【タイプ②】キャリア教育
大学等の授業や企業による教育プログラムで、就業体験は任意となります。CSRとして実施するものなど、あくまで教育目的のプログラムが該当するタイプです。
【タイプ③】汎用的能力・専門活用型インターンシップ
職場での実務体験、いわゆるインターンシップがこちらのタイプです。就業体験が必須で、期間の半分超を職場で実施することが求められます。また職場の社員が指導・フィードバックを行うことも必要です。さらに実施時期は長期休暇期間に限定され、汎用的能力型は5日間以上、専門活用型は2週間以上と参加期間も明確に設定されています。
【タイプ④】高度専門型インターンシップ
高度な専門性が要求される実務を体験できるプログラムです。2カ月以上のジョブ型研究インターンシップや高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップが該当します。
タイプ①・②は就業体験が伴わなくても実施でき、個人情報の取得が可能ですが、これまでのインターンシップ同様に、個人情報を採用活動に活用することはできません。
タイプ③はインターンシップの呼称で情報開示が行えるため、タイプ①・②と比べ学生からの応募率も高い傾向となります。
インターンシップで取得した個人情報及び評価を採用活動に利用できますが、募集学年が限定されるプログラムであることや、情報開示要件としてプログラムの趣旨や実施計画、就業体験の内容など9つの項目を公表する必要があります。また個人情報は定義上、採用関連の広報活動に利用することが可能ですが、面接等の採用プロセスに参加してもらう場合は、再度エントリーをしてもらう必要があります。
開示要件の詳細については下記をご参照ください。
❷キャリア形成プログラムの種類や具体例
ここからはキャリア形成プログラムを開催するにあたって、具体的にどのような種類のものがあるのかを紹介します。
※前項の4タイプの内、どのタイプになるかは関係なくプログラムの種類・事例としてご覧ください。
【実践型】
実際の職場にて受け入れを行い、自社のリアルな業務を実体験させるものです。学生の業界・企業理解を深めるとともに、職場・社員の雰囲気を知りたいニーズに応えられます。また企業側は現場の社員を通じ自社とのマッチング度合いを測ることができます。深い業務理解を促進するために、期間中のサポートを行うメンター役の社員の準備、1週間以上の中長期での受け入れがおススメです。
コンテンツ例:
・新商品のマーケティング業務体験
マーケティング部門にて新商品の販売戦略や広報戦略などを行い、営業部員に提案する
・〇〇基礎技術の研究開発サポート
技術開発部門にて実際に開発中の技術を受け持ち、実際の試験やレビューなどを行う
【グループワーク型】
企業側が設定した実際の業務に近しい課題に4~5名程度のグループで取り組むものです。最初に事業の強み等のレビューを行い、「新規サービス開発」などのテーマを与え、最後にグループごとに社員へのプレゼンテーションを行います。その会社でのビジネス疑似体験ができることから学生には人気があります。企業は学生の発想力や提案力、プレゼン力やリーダーシップなどを測ることが可能です。半日や1Day、2~3日などで実施可能ですが、プログラムの準備・設計が必要となります。
コンテンツ例:
・学生向けの新サービス開発ワーク
前提条件のもと新サービスを企画し、グループごとにプレゼンテーションを行う
・コンサルティング営業体感ワーク
顧客役の社員に、ヒアリングから企画、実際の提案まで行い、営業の流れを疑似体験する
【職場見学・同行型】
学生が現場を訪問し、実際に働く社員や職場の雰囲気を見学します。企画部門や技術系職種ではオフィスや工場見学を行い、営業など社外での仕事が中心の職種の場合は、同行する場合もあります。学生にとっては、気軽に実際の職場や働く雰囲気を知ることができ参加のハードルが低い一方、企業側は学生の適性を判断することは難しいともいえます。
コンテンツ例:
・半日営業同行体験
一人の社員に1~2名の学生がつき、実際の顧客訪問などに同行する
・〇〇製造現場を体験~〇〇工場見学
〇〇製品の解説を聞いたあと実際の製造現場を見学し、現場社員と質疑応答を行う
【セミナー型】
一つの会場に多数の学生が集まり、社員が業界や企業のこと、事業モデルなどについて解説する講義型のプログラムです。自社の内容だけでなく、自己分析や業界分析などキャリア観醸成につながるようなコンテンツを解説するケースもあります。参加のハードルは低いですが、就業体験を得られないことが多く、学生の満足度はあまり高くない傾向にあります。
コンテンツ例:
・〇〇業界入門セミナー
業界のことを知らない学生に、業界の成り立ちや規模感、ビジネスモデルなどを解説する
・キャリアが見える!自己分析講座
業界の特徴説明に加え、簡単な自己分析・自己PR作成を支援する
❸キャリア形成プログラム設計のポイント
最後に、オープン・カンパニーやインターンシップなどキャリア形成プログラムを設計する際のポイントを紹介します。
コンテンツを設計するにあたっては、大まかに「目的」「ターゲット」「種類」「コンテンツ」「開催時期・開催期間」を整理することが重要です。
■目的
・早期からの企業認知
・母集団形成
・採用直結 など
■ターゲット
・文系、理系
・優秀層
・低学年層 など
■種類
・実践型
・グループワーク型
・職場見学・同行型
・セミナー型 など
■コンテンツ
・業界理解促進
・企業理解促進
・仕事・職種理解促進
・企画・業務疑似体験
・キャリア観醸成 など
■開催時期・期間ツ
・夏・秋・冬開催
・半日、1Day、2Day、3Day、1週間、1カ月 など
自社の課題感に合わせてこれらを整理することで、開催規模や開催数などが見えてくるとともに、4類型のどのタイプが最適なのかが見えてきます。
例えば早期からの企業認知が目的で文系学生がターゲットであれば、グループワーク型やセミナー型で、早期となる夏に、1Dayの短期間プログラム(オープン・カンパニー)を複数開催し、多くの学生と接点を持つ設計が最適です。理系の優秀層を採用に直接つなげたい場合は、実践型で仕事理解促進につながる1週間以上のプログラム(汎用的能力活用型インターンシップ)が適しています。また、ベンチャーやスタートアップ企業で企画力や発想力など学生の資質を見極めたい場合には、グループワーク型で企画の疑似体験ができるコンテンツを検討するという具合です。
企画内容や期間・時期が固まったらターゲット学生への告知を行い、募集を行いましょう。プログラムを探す際に学生が最も利用する就職情報サイトへの掲載のほか、大学のキャリアセンターや研究室にプログラムの募集情報を提供し、大学経由で募集する方法も有効です。開催が集中する夏季休暇・冬季休暇期間で開催する場合、プログラムを用意しても応募が集まらないことも考えられます。募集開始をスピーディーに行えるよう、プログラム設計は早期からの準備が必要です。
また、プログラムの満足度を高める大きなポイントとして開催後のフォローアップが重要です。これについては、次回詳しく紹介します。
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