Vol.13理系学生採用における学校推薦について
理系学生採用においての主要施策である学校推薦の具体的な活用例やスケジュールを解説します。
公開日:2024.8.26
多くの企業にとって悩みの種である理系学生の採用。一般の就職活動の流れとは異なる動きをすることが多い理系学生にいかにアプローチしていくのか。理系学生の就活の主流となっている学校推薦について、実態や活用方法を紹介します。
Summary
❶理系学生の就活の特徴とは?
採用活動を行う人事担当者からよく聞く悩みの代表的なものとして、「理系学生の採用が難しい」というものがあります。確かに、一般的な就職情報サイトや合同説明会では、文系学生との接触はできても、理系学生との接触はなかなか難しいのが現状です。
その背景には理系を専攻する学生が全学生の35%とそもそも絶対数が少ないという事実があります。また彼らは、専門分野の学習・研究で日常的に忙しく、文系学生の様に就職活動に費やす時間がなかなか割けないため、推薦を使って就職活動を行っていることが大きな特徴です。キャリタス就活のモニター調査によれば、自由応募だけで就職活動を行う理系学生は66%で、約3割の学生は推薦と自由応募の両方で活動しています。推薦だけで就活を行う学生は少ないものの、研究室に所属した学生 は「早く就活を終わらせて、研究に打ち込みなさい」と教授から指導されることも多いため、学校推薦の枠が用意されている企業の中から就職先を選びたいと考えているのです。このように限られた理系学生を、多くの企業が採用したいと採り合っていることが、理系学生の採用のハードルが高い要因となっています。
また、理系学生の強みとしてよく挙げられるのが、「論理的思考力を身に付けている」「数字やデータに強い」の2つです。彼らは日常的に問題提起、仮設、実験・検証、改善を研究で繰り返しているため、論理的な思考が当たり前になっていますし、膨大なデータを分析しているので、当然数値管理やデータ分析にも強みを発揮できるのです。こうした強みを持つ学生は、ITやメーカー等だけでなくあらゆる業界・職種にも求められるため、採用マーケットにおいて、理系学生は圧倒的に売り手市場になっており、大手・ブランド企業志向、待遇重視などの傾向はより強まっています。
❷学校推薦の種類と特徴
学校推薦といってもいくつかの種類がありますので、自由応募も含めた理系学生の応募形態について紹介します。
■自由応募
公開されている募集情報の中から、学生側が自由に企業を選び応募していく一般的な形態です。学生は制限なく自由に企業を選べるほか、同時に何社も応募することができるのがメリットですが、忙しい理系学生にとって企業を探す労力は大きなデメリットでもあります。企業にとっては、あらゆる層からの応募が期待できる反面、理系学生からの応募は期待しづらく、また内定辞退のリスクもあるのがデメリットです。
■学校推薦(就職課・キャリアセンター経由)
大学の就職課やキャリアセンターに集まった求人をもとに、大学側が学生に企業を紹介し推薦という形で応募させる形態です。学生にとっては内定の可能性が高い企業から選べるため効率的というメリットがある一方、推薦枠がある企業の中からしか選べないというデメリット もあります。企業側は学生を集めるコストが抑えられるメリットがありますが、推薦の拘束力は強くないため、内定辞退のリスクがあります。
■学校推薦(各学部学科、担当教授、学部の就職担当教授経由)
各大学の学部学科に割り当てられた企業からの推薦枠を学科ごとに学生を推薦、もしくは就職担当教授あるいは研究室の担当教授から推薦を受けた学生が応募する形態です。学生は各学部学科、教授からの推薦付きとなるので、内定を得られる可能性が高いのですが、基本的にこの推薦形態で応募できるのは1社のみとなり、内定が出た場合辞退することが難しいため、さまざまな企業を見たい場合にはデメリットが大きいです。企業にとっては大学の指導をしっかり受けた学生を直接推薦されるため、学生の質の担保ができ、辞退のリスクがほとんどないのが大きなメリットです。ただし、推薦を得るためには研究室との深いつながりが必要なため、採用実績がない企業にとってはハードルが高い手法になります。
■後付け推薦
企業に応募し、内定と引き換えに担当教授から推薦をもらう形態です。企業にとっては選考の自由度が担保されたまま、内定辞退が減らせるメリットがあります。ただし、こちらも採用実績がないと教授からの推薦を出してもらうことは難しいのが現状です。
❸推薦採用のスケジュールと流れ
学校推薦を活用した採用活動は一般的な採用活動よりも前倒しで進められます。こちらではおおまかなスケジュールと流れについて解説します。
■STEP1 求人情報の提供
大学3年生(修士1年生)の就職活動が動き始める夏・秋に、 各研究室・学部の就職担当教授や就職課・キャリアセンターを訪問し、次年度の採用計画や推薦を希望する人数・職種などについて依頼をかけます。実績のない研究室については、つながりのある教授や就職課職員等を通じて紹介をしてもらいましょう。
■STEP2 学内での説明会、学内応募受付、学内選考
大学3年生(修士1年生)の12月~2月頃(※学校によります)に、大学内で学生に向けた推薦の説明会、学内での応募受付および学内選考が開始されます。選考方法はさまざまですが、大学の成績・学内試験・教授の判断等で絞り込まれ、企業ごとに推薦者が決まります。
■STEP3 企業での選考
大学3年生(修士1年生)の1月~4月頃にかけて、各企業での選考が行われます。多くの場合、学校推薦者用の選考フローが組まれ、大手メーカー等では配属部門を決定するマッチング面談が設けられることもあります。大学からのお墨付きのある学生の選考となりますので、ポジションや部門の確認といった傾向が強いようです。推薦を受けた学生に不合格を出す場合には、その理由について丁寧なフィードバックを行うことが重要です。
STEP4 内定
大学4年生(修士2年生)の4月~6月頃には、自由応募と同様に内々定・内定出しが行われます。できるだけ速やかに選考を終えて、研究に注力できる環境を整えてあげるのがよいでしょう。
こちらで紹介したのは一般的な例となります。昨今の採用活動の早期化やインターンシップを通じた選考の影響を受けて、学校推薦についても時期が早まる傾向がありますので、各大学とコミュニケーションを密にとり、最新情報をキャッチアップするようにしてください。
次回は、大学内で行われる学内合同説明会について説明いたします。
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